『
響
き
あ
う
心
』
を
か
け
ま
わ
っ
た
。
焼
け
跡
か
ら
の
国
づ
く
り
が
始
ま
る
。「
国
土
の
均
衡
あ
る
発
展
」
を
国
是
と
し
た
。
そ
れ
は
、
よ
り
強
く
国
が
主
導
す
る
も
の
だ
っ
た
。
順
調
に
伸
び
る
税
を
背
景
に
、
地
方
の
公
共
事
業
を
お
こ
す
。
補
助
金
や
交
付
税
で
仕
送
り
す
る
。
農
産
物
の
価
格
を
保
証
す
る
。
企
業
の
地
方
移
転
を
促
す
。
こ
の
効
果
は
大
き
か
っ
た
。
世
界
で
も
類
の
な
い
、
厚
い
中
間
層
が
生
ま
れ
、
社
会
の
安
定
に
大
き
く
貢
献
し
た
。
一
転
し
て
環
境
が
変
わ
っ
た
。
成
長
の
鈍
化
、
国
の
財
政
悪
化
、
公
共
事
業
の
減
、
企
業
の
海
外
移
転
、
農
業
に
も
競
争
の
波
。
地
方
を
支
え
て
き
た
基
盤
が
崩
れ
て
き
た
。
次
第
に
上
か
ら
の
振
興
策
は
、
輝
き
を
失
っ
て
き
た
。
そ
こ
に
人
口
減
の
衝
撃
が
襲
う
。
国
は
「
地
方
創
生
」
と
い
う
名
の
振
興
策
を
打
ち
出
す
。
各
自
治
体
も
創
生
計
画
を
作
成
。
だ
が
こ
れ
も
、
事
業
モ
デ
ル
を
国
が
決
め
、
交
付
金
で
誘
導
す
る
、
従
来
と
同
じ
ス
タ
イ
ル
。
自
治
体
の
プ
ラ
ン
も
、
変
わ
り
ば
え
し
な
い
金
太
郎
飴
。
こ
の
間
に
、
依
然
と
し
て
人
は
東
京
に
流
れ
、
地
方
は
ゆ
る
や
か
に
力
を
失
っ
て
い
く
。
今
、
国
土
政
策
は
壁
に
あ
た
っ
て
い
る
。
な
ら
ば
地
方
が
主
役
に
な
れ
ば
い
い
。
と
こ
ろ
が
、
長
い
間
の
習
性
で
、
国
の
指
示
を
待
つ
体
質
が
身
に
つ
い
て
し
ま
っ
た
。
自
分
の
頭
で
考
え
る
と
い
う
の
は
苦
し
い
。
む
し
ろ
何
か
に
従
っ
て
い
る
方
が
楽
だ
。
行
き
過
ぎ
た
国
へ
の
肌
着
や
イ
ン
ナ
ー
で
有
名
な
、
グ
ン
ゼ
と
い
う
繊
維
会
社
が
あ
る
。
創
業
時
の
社
名
は
「
郡 ぐ
ん
ぜ
是
製 せ
い
絲 し
株
式
会
社
」。
郡
是
と
は
、
面
白
い
名
前
だ
。
明
治
の
半
ば
過
ぎ
、
小
学
校
教
師
の
波 は
多 た
野 の
鶴 つ
る
吉 き
ち
は
、
あ
る
人
の
講
演
を
聞
き
、
い
た
く
感
銘
し
た
。
京
都
の
西
北
に
位
置
す
る
綾
部
は
、
養
蚕
の
盛
ん
な
地
域
。
こ
れ
を
い
か
し
、
蚕
糸
業
を
お
こ
そ
う
と
決
意
す
る
。
そ
の
人
は
前 ま
え
田 だ
正 ま
さ
名 な
。
産
業
発
展
を
担
う
農
商
務
省
の
高
官
。
薩
摩
の
人
で
殖
産
興
業
の
父
と
い
わ
れ
た
。
前
田
は
「
今
日
の
急
務
は
、
国
是
・
県
是
・
郡
是
を
定
む
る
に
あ
り
」
と
説
い
た
。
是
と
は
進
む
べ
き
道
を
い
う
。
国
は
国
と
し
て
の
、
郡
は
郡
と
し
て
の
振
興
方
針
を
明
確
に
す
る
。
特
に
地
域
に
お
い
て
は
、
茶
・
生
糸
・
織
物
な
ど
、
そ
こ
に
根
ざ
し
た
産
物
の
重
要
性
を
訴
え
た
。
品
質
を
上
げ
、
輸
出
を
促
し
、
銀
行
設
立
に
よ
る
資
金
調
達
な
ど
、
地
方
か
ら
の
産
業
振
興
策
を
提
案
し
た
。
し
か
し
、
富
国
強
兵
・
海
外
技
術
の
重
視
等
、
中
央
集
権
的
な
手
法
で
、
国
づ
く
り
を
進
め
る
政
府
と
は
あ
わ
な
か
っ
た
。
上
層
部
と
ぶ
つ
か
り
野
に
下
る
。
前
田
は
、
地
域
資
源
の
活
用
・
こ
れ
を
踏
ま
え
た
推
進
計
画
・
協
働
の
精
神
の
三
原
則
に
よ
る
下
か
ら
の
振
興
を
説
き
、
全
国
依
存
は
、
地
方
の
創
意
工
夫
の
力
を
弱
め
た
。
前
田
イ
ズ
ム
は
、
地
域
づ
く
り
の
基
本
を
示
し
て
い
る
。
足
も
と
に
あ
る
、
歴
史
・
文
化
・
自
然
・
産
業
の
資
源
を
真
ん
中
に
お
く
。
こ
れ
を
磨
き
、
最
大
限
活
用
す
る
。
そ
の
う
え
で
不
足
す
る
も
の
を
外
か
ら
補
う
。
こ
れ
ま
で
の
外
発
的
手
法
か
ら
内
発
的
発
展
に
、
ベ
ク
ト
ル
を
転
換
す
る
こ
と
が
求
め
ら
れ
て
い
る
。
市
町
村
の
安
定
な
く
し
て
国
の
安
定
は
な
い
。
国
と
地
方
は
上
下
で
は
な
く
、
支
え
合
う
パ
ー
ト
ナ
ー
で
あ
る
べ
き
と
い
う
。
前
田
は
、
真
剣
に
国
を
考
え
、
地
方
へ
の
優
し
い
ま
な
ざ
し
を
持
つ
信
念
の
人
だ
っ
た
。
波
多
野
は
、
郷
土
愛
に
あ
ふ
れ
、
人
間
愛
に
あ
ふ
れ
、
企
業
家
精
神
に
満
ち
て
い
た
。
養
蚕
を
産
業
化
し
、
雇
用
を
つ
く
り
、
域
内
に
富
が
回
る
よ
う
に
し
た
。
そ
の
精
神
は
社
是
に
表
れ
て
い
る
。「
人
間
尊
重
と
優
良
品
の
生
産
を
基
礎
と
し
て
、
会
社
を
め
ぐ
る
す
べ
て
の
関
係
者
と
の
共
存
共
栄
を
は
か
る
」。
当
時
の
製
糸
工
場
は
、
農
家
の
子
女
が
主
力
。
女
工
哀
史
と
い
わ
れ
、
劣
悪
な
環
境
で
働
か
さ
れ
て
い
た
。
同
社
は
女
工
で
は
な
く
、
工
女
と
呼
び
、
女
学
校
ま
で
設
け
教
育
に
力
を
い
れ
た
。
ま
た
広
く
出
資
を
募
り
、
こ
の
時
代
に
は
極
め
て
稀
な
、
株
式
会
社
と
し
て
ス
タ
ー
ト
し
た
。
会
社
は
、
事
業
を
通
し
て
社
会
に
貢
献
す
る
公
器
で
あ
る
こ
と
を
知
っ
て
い
た
。
志
の
高
い
行
政
官
と
企
業
家
の
精
神
は
見
事
に
共
鳴
し
た
。
市長の手控え帖
広報しらかわ 2017.8(H29)